「VORVADOS」(SYU from GALNERYUS) レビュー
”ギターヒーロー”が現れにくくなった現代の音楽シーンにおいて第一線で活躍し続けているGALNERYUSのSYUが3rdソロアルバム「VORVADOS」をリリースした。僕にとっての神様である。
今回はタイトル通りアルバムのレビューを。
本人がインタビューで言ってたけどバンドメンバーのソロアルバムって舐められがち…というかそこまでチェックしない人が多かったりして日の目を浴びにくいのが現実だと思う。ボーカルならまだしもギタリストのソロまで追っている人は相当好きなんだろうなと。
それでもSYUはメタル界隈ではかなり人気があるし話題にはなっているほうだとは思う…がもっと注目を浴びるべきだと思うので愛をこめて感想を綴っていく。
今回のアルバムの目玉はなんといっても「ゲスト」の豪華さだろう。とりあえず列挙してみる。
・Fuki (from Fuki Commune、unlucky morpheus,DOLL$BOXX): Vocal (Tr. 2, 8)
-メタル界隈では有名な女性ボーカリスト。とにかく声量がヤバい。メタルを歌うために生まれてきたような声を持っているがソロなんかだとアニソンっぽい曲が多かったり別に声を張り上げなくても上手いし繊細な曲も歌える万能ボーカリストなんじゃないかと。そういえばカラオケバトルにも出てました。
[Official Video] Unlucky Morpheus - 「CADAVER」「REVADAC」 - YouTube
・苑 (from 摩天楼オペラ): Vocal (Tr. 3)
-とにかく癖が強い!ヴィジュアル系メタル界隈だともう安定の地位を築きつつある「摩天楼オペラ」のボーカル。ビブラートが特殊…一発聴いたらすぐ苑ってわかる。僕の友人がモノマネしててめっちゃ面白かった。
・HARUKA (from TEARS OF TRAGEDY): Vocal (Tr. 4, 10)
-この人もメタルバンド…なのだろうか、このジャンルでは異質な存在である。
TEARS OF TRAGEDYというバンドがそもそも変わったバンドでJPOPにハードなギターを混ぜたような…そんな感じ。気になったら聞いてみてください。僕は好き。
とてもやさしい声をしている。化学反応という点では面白いコラボだなと思った。
TEARS OF TRAGEDY - Spring Memory (OFFICIAL VIDEO) - YouTube
・団長 (from NoGoD): Vocal (Tr. 5)
-一応ヴィジュアル系バンドのボーカルなのだが顔面が全くヴィジュくないという斬新なボーカリスト。MCとか聞いてると芸人なんじゃないかと思う。自称「埼玉一ハイトーンが出る男」
歌唱力は本物でシャムシェイドの「1/3の純情な感情」をキー+2で歌ってしまうヤバい人。
NoGoD/神風(FULL Version) - YouTube
・AKANE LIV (from LIV MOON): Vocal (Tr. 6)
-宝塚出身という異色なメタルボーカリスト。メタル的な凄さというかミュージカルとかそっちのヤバさ。
実はSYUの1枚目のソロアルバムやAOSのバックコーラス等でですでにコラボ済みだったりする。チェケラ。
Alone - Liv Moon ft. Syu [GALNERYUS] Live 2011 - YouTube
・DOUGEN (from THOUSAND EYES、UNDEAD CORPORATION)): Vocal (Tr. 6)
-ここまで全員クリーントーンのボーカリストだったがここに来てデスヴォイス担当の坊主のいかつい人。この人がやってるバンドが結構ツボなバンドが多い。
SYU自身がちょいちょいデスヴォイスを出すことはあったが本業の人ががっつり歌うのって実は今までないんじゃないか?珍しいコラボかもしれない。
THOUSAND EYES - Day Of Salvation (OFFICIAL VIDEO) - YouTube
・小野正利 (from GALNERYUS): Vocal (Tr. 9)
-SYUを知っていてこのブログを読んでいる人にとっては説明する必要がない人。GALNERYUSのスーパーボーカリストである。以上。
[PV] DESTINY - GALNERYUS - YouTube
ただ、今回はガルネリウスの歌い方ではなくソロ時代の歌い方で歌っているらしいので別物と考えてもよさそう。紅白出場歌手の本気。
・YUHKI (from GALNERYUS): Keyboards (Tr. 3, 4, 9)
-この人も説明が要らない人。GALNERYUSのスーパーキーボーディストである。ユーキネンに任せておけば間違いない。
・Jacky Vincent (from CRY VENOM): Guitar (Tr. 5)
-このメンバーの中で唯一僕が知らなかった人。どうやらギタリストらしい。って5曲目のギターSYUじゃないんかい!!って思ったけどかっこよかったです。感想は後程。
VORVADOS by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の「VORVADOS」をApple Musicで
1.「VORVADOS」
GALNERYUSでは定番のインストのOPチューン。ソロアルバムということもありギター全開。
いつもよりヘヴィな仕上がりに感じた。ギターを求めてアルバムを手にした人はこの時点で満足度高いんじゃないか?邪悪なリフと流麗なギターソロの対比がぐっとくる。
1曲目インストシリーズの中ではGALNERYUSの6thアルバムの「united blood」の次くらいに好きかもしれない。
2.「REASON」(ゲストボーカル:Fuki)
REASON, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"REASON"をApple Musicで
この曲だけMVが公開されているアルバムの顔ともいうべき王道メタル曲。
公開日にこれを聴いた時点で僕の中ではこのアルバムは満点に近い…というくらいの名曲。
重厚なシンセ、これでもかというくらい弾きまくるSYU…それに対抗するFukiの歌唱がえぐい。これはコラボを通り越してバトルだとおもう。featじゃなくてVS。
もしガルネリのボーカルが小野さんじゃなくてFukiだったらというif曲の印象。
サビのハイトーン、僕が知りうる限りFukiの最高音なんじゃないだろうか。メタルを嗜んでいる人なら熱くならない人はいないんじゃないだろうか。
ギターソロが結構長めで豪華。SYUの一番の魅力はやはりロングトーンの泣かせ具合だと再確認した。ギターで起承転結を作るのが本当にうまい。
今回の音も結構このみだったりする。ここ数年の彼の音の趣向としてはとにかくピッキングニュアンスを出すためにハイミッドガン振りといった感じだったのだがちょっと前のファットさが戻ってきてとてもバランスが良い印象。最高。
3.「ここで区切れと天使は歌う」(ゲストボーカル:苑)
ここで区切れと天使は歌う, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"ここで区切れと天使は歌う"をApple Musicで
摩天楼オペラの流麗な楽曲とは打って変わって男らしい古き良きヘヴィメタルな曲。ミディアムテンポっていうのが意外。
一度見たら忘れられない曲名なのが結構ツボだったりする。ラスサビのハイトーンで優勝。
ヴィジュアル系ボーカルが曲調で中和されていてバンギャでもメタラーでもうまいこと聴けるようになってると思う。
4.「暁」(ゲストボーカル:HARUKA、ゲストキーボード:YUHKI)
暁, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"暁"をApple Musicで
シンフォニックで荘厳、胃もたれするくらい重い曲。HARUKAの優しい声との化学反応加減がすごくて僕の印象としては荘厳というよりは「幻想的」だなと。
ゲームの挿入歌とかで流れたらめっちゃアガりませんこれ?一見合わないんじゃないかっていう曲調でもうまくアレンジするSYUの手腕に脱帽。
5.「Euphoria」(ゲストボーカル:団長、ギターソロ:Jacky Vincent)
Euphoria, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"Euphoria"をApple Musicで
この曲が予想以上によかった。このアルバムの中でも上位に入るお気に入り曲である。
EDMっぽいイントロでまず「ん?」ってなってからの安心感よ…人はギャップに弱い。
メタル聴いてるときってあんまり歌詞を意識することって少なかったりするんだけど、この曲ものすごく歌詞が熱くて胸が熱くなってしまった。めちゃくちゃ見た目がふざけてる団長がマジモードでやってしまった…的な感動。いや、歌うときはいつでもマジだろうけど。
ギターソロもSyuとは全くキャラが違うフュージョンプログレの系譜の流麗なソロ。ポリフィアといい最近の若手はちょっと上手さの次元が違う。
6.「Chaotic Reality」(ゲストボーカル:DOUGEN、AKANE LIV)
Chaotic Reality, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"Chaotic Reality"をApple Musicで
アルバムどころかメタル全体を見渡しても存在しなさそうな曲。何がヤバいってゲストの組み合わせ。メロデス仕込みのゴリッゴリのデスヴォイスに宝塚仕込みの超絶高音…
「決して結ばれる事のない2人」ってテーマらしいです。この曲だけで一本物語が出来そう。
音作りに関してもSYUにしてはかなりドンシャリ気味の冒険曲。ソロアルバムならではという感じがする。
7..CACOTOPIA(ボーカル:SYU)
CACOTOPIA, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"CACOTOPIA"をApple Musicで
ドラムの打ち込み、ベース、ギター、そしてボーカルも…という「100%SYU」な曲。
実は昔やってたバンドでボーカルやってたりした経験からか普通に歌上手。イケメンボイス。ちょっとヴィジュみが強め。
1stソロアルバムでmuseのカバー歌ってた時から歌声が結構好みだったので今回も歌ってくれてうれしかったです。曲の印象はとにかく荒々しい印象。
タイアップとかで流れてそう。CDTV的な?
普段ゆるい喋り方してるからギャップが強いのもポイント。女だったら確実に惚れていたところだった。
8.AndroiDedication(ゲストボーカル:Fuki)
REASONがFukiのメタルな面だとしたらこっちは歌謡的なFuki。ギターが云々というよりは歌を全力で生かしたような曲。
サビのラスト「どうか泣かないで」で泣いた。こういう曲は洋楽メタルにはない強みだよなぁって思いながら聞いてました。情緒が溢れている。
ギターソロ中盤のタッピングフレーズ、新技やなってニヤッとしてしまったガルネリオタク結構いそう。
9.哀傷(ゲストボーカル:小野正利)
哀傷, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"哀傷"をApple Musicで
インタビューとかでも言ってた通りソロ時代の小野正利だった。いや本当に。
SYUって昔から「メタルはやっているけどとにかく一番大切なのは歌で、弾き語りでも感動できるような曲を作っている」って言ってたんだけどその通りだなと。過剰な装飾が無くてもいいコード進行、メロディがあればそれだけで人は感動できる。
バラードのギターソロでこれだけ速弾きしているのに違和感を持たせず感動させるっていうのがすごい。構成力が半端じゃねえ。
10.未完成の翼(ゲストボーカル:HARUKA)
未完成の翼, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"未完成の翼"をApple Musicで
メタル史に新たな1ページを築いたんじゃないかという名曲。結局のところアルバムの中で一番好きな曲はこれだったかもしれない。
メジャーキーの疾走チューンなのだが荒々しい速さというよりは曲名通り大空を飛んでいるような疾走感。HARUKAの清涼感のある声があまりにマッチングしすぎて…
歌詞が本当に刺さるというか、音楽や道徳の教科書に載っててもおかしくないポジティブさ。
僕が同じことを言っても薄っぺらくなりそうだがここまで演出されてしまうと本当に元気が出る。メッセージをいかに聴衆に届けるか…それが歌モノの音楽の究極的な目標の1つであるとは思うのだがこの曲はメタルという楽器主体になりがちなジャンルで達成している点が満点。
曲だけ注目してみるとアルバムの中で一番ガルネリウスに近かったりするんじゃないだろうか?コード進行もそうだがブレイクダウン→ちょっとインターバル→泣きのソロ→超絶フレーズ→ラスサビでのリズムのキメ…あれ?これどこのガルネリウス?
ギターソロ後半のSYUお得意のトレモロフレーズ、中華っぽい響きなんだけどめちゃくちゃ清涼感あってかっこいい。名フレーズだと思う。
「あの空へーーー!」からのアウトロはお約束だってわかっているのだが…何度聞いてもウルっときてしまう…優勝。
11.Blessing
Blessing, a song by SYU(from GALNERYUS) on Spotify
SYU(from GALNERYUS)の"Blessing"をApple Musicで
エンディング曲。前の曲が前の曲だけに虚無感がすごい。アニメ一気見した後みたいな感じになる。この例えどうなんだ。
インストということもありそんなに聴いたわけじゃないけどエンディングがあると1枚の”作品”という感じが出ますね。
アルバムという形態が古くなってきたって色んなところで言われてたりするけどやっぱ映画やドラマのように何曲も積み重なってストーリーみたいになってるのっていいなぁと。「VORVADOS」は別にコンセプトアルバムじゃないんだけどね。
期待を裏切らない作品でした。
SYUのソロアルバムなんだけどSYUのギターを求めて聞くんじゃなくてもっと歌が聴きたいって思える曲が多かったって。とにかくアレンジが秀逸。
ギターが弱かったわけじゃないんですけどね…むしろいつも以上に名フレーズだらけだったし。歌ありきで曲を作ってるんだなってことが良く分かった。優勝。
気づいたら6000文字オーバー……それではステイメタル!